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二日目   

翌日(3月12日)

慣れない車中泊と夜通し続いた余震で、まともに眠れるはずも無く、それでも昨日の吹雪が嘘のような美しい朝が来た。

早速家に戻り足の踏み場を取り敢えず確保。
それから食料確保!早めに(この頃まだ7時前)学校へ行こう!
でも既に学校は食料を求める人で長蛇の列。
おまけに、仕方ないとは思うものの、本当にしょうがないとは思うものの・・・
糞便や人の体臭、それに混じった食べ物の匂いで狭い体育館は充満していた。
5分ほど並んで吐き気を催す。
やむを得ずオヤジ様に引きずられるようにして、寒い屋外へ出る。
情けない。。。情けなかった。
でも二か月が過ぎた今でも、このようなプライバシーも、手足を伸ばす空間も限られる避難所に生活する人たちがまだ居るのも事実。
それを思うと・・・それだからなお罪悪感は私達を苦しめているのだ。

それでもお腹は空く。開いているコンビニを探し、自転車で町中を走る
ようやく飴を手に入れ家に戻る。パンもオニギリもカップ麺も、乾電池もホッカイロもガスボンベも全く手に入らない。
これじゃ痩せちゃう(痩せたいが・・・)、少し足を伸ばして太白区の長町商店街まで行こう!
あそこなら色々なお店があるから、1店や2店くらい、何か売ってくれるだろう。

コンビニやスーパー、食べ物を扱うお店の前には必ずと言っていいほど行列、
でもその店が何かを販売する保証は無く、シャッターさえ開いていないのだ。
その中でお肉屋さんの前に「9時からコロッケ売ります」の張り紙を見つけ
小躍りして列に加わる。
ようやく手に入れた熱々のコロッケ。。。
さくさくの衣を噛み締めると、ねっとりと甘いジャガイモが流れ出て舌を焼く。
こんなにおいしい食べ物が、この世にあったなんて・・・
本当にそう思えるほどの美味しさだった(実は芋コロッケ少し苦手)。
買った店先でオヤジ様と二人、涙ぐみながらハフハフ食べた。
そして3個残ったコロッケをカイロ代わりにして、また店を探す。

今度はお米屋さんの前に行列。
「11時からオニギリ売ってくれるんだってよ」やった!有り難い。
手に入れた時には既に12時を過ぎていたけれど。
コロッケとオニギリを手に、家に帰る。
ところでビンボーが売り(?)のシボ家、常にはお金など持っていないのに
11日の昼にたまたまお金を下ろしておいて正解だった。
小学校の配給以外は普通にお金を出して何でも買わなきゃいけないのに、
銀行ATMが全く機能していないんだから!

そしてシボ家の冷凍庫には食物が無くても、保冷剤だけはたっぷりと詰め込まれている。これが後々功を奏した。
丸三日電気が来なくて冷蔵庫が冷えなかったにも拘らず、中のものは腐るどころか、アイスクリームも溶けずに済んでいた!ラッキー!
水だけは最初から出続けてくれていたけれど、食料確保は最重要問題。
食べたい気持ちをグッと抑え、オニギリ3個とコロッケを1個残して片付けと掃除を始める。

掃除とは言っても停電の為掃除機が使えない。
ホウキと塵取りで、原始的にゴミを集める。
ところが食器や飾り物が壊れて砕けたゴミは重く、ホウキでは中々集められない。
結局手で集めてゴミ袋に入れる。
埃だらけの家の中、取り敢えず今晩眠る事が出来るような状態にした。
・ ・・が、陽の射さない家の中は驚くほど寒い。
電気は来てないけれど我が家には石油ストーブがあるのでそれで暖をとろうと火をつける・・・が、着かない。
実はストーブの上に仏壇や諸々のものが落っこち、更にその勢いで載せていたやかんがひっくり返り、辺りは水浸しとなっていたのだ。
当然ストーブはびしょ濡れで、火をつける事など出来なかった。。。
この事が私にとって、一番の辛い誤算だった!
灯油さえ買っておけば停電でコタツもヒーターも使えなくても暖かく過ごせるし、ガスがでなくてもストーブで煮炊きが出来ると思っていたから。
結局便利な近代生活(?)に慣れ切っていた私達にとって、ライフラインはどれが損なわれても正常に機能し難いと言う事だ。

寒くて寒くて、昼まだ陽の高いうちは、車の中でヒーターを付けずに過ごす事が一番暖かいのだと言う事になった。
でも夜になったらどうする?せっかくお布団で眠れるように片付けたのに・・・
何より、このまま車中泊で車のヒーターを使い続けたらいずれガソリンが底を付き、動かす事も出来なくなってしまう。
あっという間に日が暮れる、真冬並の寒さの中、私達は寒くても布団を被りながら眠れる家の中に戻る事にした。
幸いな事に電気の来ない冷蔵庫の中には、冷え冷えの発泡酒がたっぷり!
暖める事が出来ないけれど少しはおかずの残りもあって、暗闇の中で震えながらの晩酌。
ラジオから流れる絶望的なニュースに泣きながら耳を傾け、小さな懐中電灯の灯りでまだまだ続く大きな余震に怯える、二日目の夜が更けてゆく・・・

by seechan2525 | 2011-05-14 10:14 | 311のあと・・・ | Comments(8)

Commented by みえり at 2011-05-15 06:29 x
シーボーさんの地震当日そして翌日の記録,私もわすれません

コロッケのありがたいこと!
シーボーさんもオヤジさんもシボちゃんも元気でよかった.
発泡酒万歳♪でも,寒くて大変だったね~

今は春の仙台の写真に心が和みます
Commented by シー坊 at 2011-05-15 10:45 x
みえり様、有り難うございます
このコロッケを売ってくれたお肉屋さん、今休業状態なんです
あの時はきっと、かなり無理してお店を開けていたのでしょう
その辺り、地盤が悪く、立入禁止の建物や
今でも道路が波打って浸水している地域なんです
あのコロッケのおいしさ、オニギリの嬉しさは
一生忘れないでしょうね
Commented by yura-tami at 2011-05-15 22:50 x
胸が締め付けられるような思いで読みました

今もなお、苦しんでおられる方を思うと
わたしたちの生活の豊かさが申し訳ない気がします

まだ、忘れちゃいけない・・・これからも支援していかないと
そういう思いを新たにしました
Commented by シー坊 at 2011-05-16 07:13 x
yura-tami様、有り難うございます
そうなんです、罪悪感…
申し訳無さで一杯なんです
でもその気持ちを抱えてばかりじゃ前へ進めない
進めなかったら、復興はあり得ない
そうなったら犠牲となられた方々に、もっと申し訳無い…
だからyura-tami様のように思って下さる方々が励みになります
私達も元気出して生きていかないと…ね!
Commented at 2011-05-16 15:19
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by seechan2525 at 2011-05-16 20:58
鍵コメ様、うん、それ言えてるかもしれない
そうならざるを得ないのかもしれないけれど、ね

保冷剤、使えるでしょう
そうだ、省エネにも良いかもね♪
Commented by めんたん at 2011-05-16 21:35 x
コロッケを売ってくれたお肉屋さんが現在も休業状態というコメントが、また切ないなあ。

こちらでは、やっぱり地元のお肉屋さんが、お家が浜の近くで、様子を見に行ったときに津波がきて。夫婦でお亡くなりになってしまったの。

そこのウズラの玉子フライが、ソーセージも挟まって、おぼこベロの夫が大好きだったんだ~。あの味がもう食べられないのか、と思うと、また切なくなるんだ。
Commented by シー坊 at 2011-05-16 21:44 x
めんたん、そういうのあるよね
コロッケのお肉屋さん、お店修繕中なのかも
その近くの阿部蒲、立入禁止の札が・・・そう言う所なんだもの
旦那さんも残念でしょうね。大人にならなきゃね(?)

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